トッド・フィリップス「ジョーカー」

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去年の劇場公開を観覧してから月日は経ち、NETFLIXで配信されたので2回目の視聴。

 

出生の秘密に関して初めて観た時にはちんぷんかんぷんぷんだった。

こればっかりは脳の処理能力の低さを恨む。でも今回把握したのでスッキリした。

 

ジョーカーは殺人を犯すんですけど、そこだけを見て彼を断罪してしまえるような映画ではなかったです。どんなにつらい境遇であっても、犯罪に手を染めず立派に生きている人もいる。しかし、この映画は「一人の人間に責任を全て押し付ける」ことをしていない。立派に生きている人はもちろん素晴らしいけれど、その人の挫けない心を望み、称賛することは裏を返せば「その人自身の問題」だと問題自体を矮小化してしまうのと変わらない。問題の本質は、人々の無関心、不寛容、貧困、救済システムの崩壊等で社会から零れ落ちてしまう人々を拾い上げることが出来ないことである。殺人は許されることではない。しかし、彼が社会から「無き者」とされて、苦しみを孤独と共に抱えながら生きてきてそれが殺人という形ではあるが「存在するもの」へと変容する。苦しみを共有するたくさんの人々がそれに触発されて大規模な暴動へと発展していく。手段はともかく彼が行ったことは社会の底の底にいる者たちの存在を示したのだと思う。彼と共振する部分は一つ。人を貶める行為を許さないこと。私は、自分のできうる限り寛容に、ジョーカーのような人を生み出さない社会を目指して行動していきたい。